優先席付近、電源オフは必要?

「優先席付近で携帯電話の電源をお切りください」という車内放送での呼びかけ。心臓ペースメーカーへの配慮から定着したものだが、近年「影響はない」という調査結果も出ているそうだ。しかし本当に優先席の近くで携帯電話を使っても大丈夫なのだろうか?
JR京浜東北線車内で6月、70代の男がタブレットを使う乗客に「優先席でいじるな」と刃物を突き付けたそうだ。約50人が線路上に逃げ出す騒ぎになったという。昨年12月には相鉄線の優先席で60代の男がスマホを使う女性に「降りろ」と怒鳴り、非常ボタンを押したという。男は駅のホームと車両にまたがり発車を妨害したとして、今年1月に威力業務妨害の疑いで逮捕。同様のトラブルを昨年4月から39回繰り返していたそうだ。
電車の中で携帯端末をめぐるトラブルが後を絶たないそうだ。東京メトロが「携帯が原因の客同士の喧嘩は頻繁」といい、各社も頭を悩ませているという。
「電源オフ」のルールは、携帯電話の電波がペースメーカーに干渉して脈を乱す恐れがあるとして2000年ごろ始まった。首都圏17社は03年に「優先席で電源オフ」の統一ルールを採用。翌年関西が続き、全国に広がった。
しかし、第2世代と呼ばれる携帯電話サービスが終わり、電波が弱い第3世代になって動きが出てきた。「携帯電話とペースメーカーの距離を22センチ以上」と定めていた総務省は13年、指針を15センチ以上に緩和した。指針緩和を受け、京阪電鉄は13年末に「混雑時のみ電源オフ」ルールを導入。翌年、JR西日本と関西鉄道協会も続き、足並みをそろえた。
一方、首都圏では「関西と違って混雑率が高く、各社間の乗り入れも多い」と慎重な見方を示している。15センチ以上離す総務省方針に従えば、通勤ラッシュのたびに電源をオフにしなければならず、関西ルールの導入は難しいとのこと。
しかしここで見直しの動きが出ている。総務省は昨年3月に14機種のペースメーカーに1センチ未満の距離から携帯と無線LANの電波を同時に当て、全機種で「影響なし」とする実験結果を公表。今年6月には「実際に影響が発生するとは限らない」との文言を方針案に盛り込んだ。9月にも決まる見通しで、JRは東日本は指針を受け、優先席で常時電源オフは求めない方向でルール変更を検討するとみられる。
では、ペースメーカーを使っている当事者たちはどう思っているのだろうか。日本心臓ペースメーカー友の会の日高進副会長は「患者には『電波の影響は気にしなくていい』と訴え続けてきた」と話す。自身も利用者だが、携帯電話はいつも胸ポケットに入れているそうだ。
日本不整脈会の中島博医師も「健康被害には至らない」と話す。今のところ電波が影響した事例の報告はないという。「電源オフの車内放送は無駄な恐怖心をあおるだけ。すぐにやめるべきだ」という声もある。
しかし、前述の事件のように長年そう信じ込んでなかなか考えを改められない人もいるだろう。影響はないという事実が早く広まってくれることを願う。